鍼灸師の国家試験では医療概論、衛生学公衆衛生学、関係法規、解剖学、生理学、病理学、臨床医学総論、臨床医学各論、総合問題(臨床医学)、リハビリテーション医学、東洋医学概論、経絡経穴概論、東洋医学臨床論、総合問題(東洋医学)、はり理論、きゅう理論などが出題されます。
国試対策の勉強をする際にはこれらの分野を「基礎科目」「暗記科目」「応用科目」に分けると効率的です。
基礎科目は解剖学と生理学と臨床医学総論と東洋医学概論と経絡経穴概論。
暗記科目は医療概論と衛生学公衆衛生学と関係法規とリハビリテーション医学とはり理論ときゅう理論。
応用科目は臨床医学各論と東洋医学臨床論と総合問題(臨床医学/東洋医学)と考えてもらうと勉強を効率よく学べると思います。
特に応用科目である臨床医学各論と東洋医学臨床論と総合問題は基礎科目の内容を理解していないと問題を解くことは難しくなります。
目次
国家試験での応用科目の得点比率(@鍼灸国家試験)
鍼灸国家試験の応用科目に分類されるのは
臨床医学各論
東洋医学臨床論
総合問題(臨床医学)
総合問題(東洋医学)
の4科目です。
過去の鍼灸国家試験の出題傾向
臨床医学各論 12.2%
東洋医学臨床論 13.3%
総合問題(臨床医学) 4.4%
総合問題(東洋医学) 5.6%
合計35.5%
過去の鍼灸国家試験での問題数
臨床医学各論 22問
東洋医学臨床論 24問
総合問題(臨床医学) 8問
総合問題(東洋医学) 10問
合計64問
2021年の問題の改訂でもこの4つの応用科目【臨床医学各論、東洋医学臨床論、総合問題(臨床医学)、総合問題(東洋医学)】は問題数が増えています。
解答には複合的な判断が必要。@鍼灸国家試験
鍼灸国家試験を作成・監修をしている公益財団法人東洋療法研修試験財団の『あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師 国試あり方検討会』では試験科目が「基礎科目」と「応用科目」と表記されています。
国家試験で問われる総合問題は実際の臨床で出くわすであろう「具体性のある症例」に対して、評価や検査法、具体的なアプローチを選択して答えを導いていく問題になります。
そのため 総合問題=応用科目 と考えた方が国家試験対策の勉強法としては理解しやすいかと思います。
評価や検査法、具体的なアプローチは、西洋医学的観点の問題(臨床医学)と東洋医学的観点の問題(東洋医学)の二つのパターンで出題されることから、鍼灸国家試験対策ラボでは分かりやすく考えるため、総合問題(臨床医学)・総合医学(東洋医学)と分けて考えて解説しています。
総合問題(臨床医学)の2つの傾向
総合問題(臨床医学)で問われることが多い傾向になるのはこの2つ。
①「具体性のある症例」について
②臨床で治療することが多い運動器疾患について
です。
①「具体性のある症例」について
鍼灸国家試験の総合問題は、一つの症例=「具体性のある症例」 を最初に説明され、その症例に対して問1・問2に答えていく問題になります。
具体性のある症例というのは29回(2021年鍼灸国家試験)の問題であれば
「14 歳の男子。サッカー部に入部してから 3 か月が経過した。最近腰部を反らすと 腰に痛みが出るようになり来院した。」
問1 予想される診察所見はどれか
1、体幹回旋で腰痛が増強する。 2、体前屈で腰痛が増強する。
3、SLR テストは陽性となる。 4、FNS テストは陽性となる。
問2 本症例に特徴的な単純エックス線所見はどれか
1,テリアの首輪 2、椎間板腔の狭小化
3、腰椎前弯の消失 4、椎体の変形
28回(2020年鍼灸国家試験)より前は一つの症例に対して一問の問題です。
次の文で示す症例の確定診断のために最も重要な検査はどれか。
「25 歳の男性。10 日前に上気道炎に罹患、 3 日前から両下肢の粗大筋力が低下、
後に両上肢へと進展した。」
1、末梢神経伝導速度検査 2、頸椎MRI検査
3、血中CK値測定 4、遺伝子検査
というような形式で出題されています。
このような文章を読み込み、設定された問題に回答していく能力が求められます。
ただし実際にこれらの問題を解くには、
解剖学
生理学
臨床医学総論
臨床医学各論
の知識を用いて、症例に対して評価や検査法、具体的なアプローチに関して問題を解くことになります。
これらの総合問題(臨床医学)に関わる科目の出題傾向を見ると
解剖学 5.0%
生理学 5.0%
臨床医学総論 5.6%
臨床医学各論 12.2%
合計が27.8%にもなり、ここに総合問題(臨床医学)4.4%が加わり32.2%になります。
それに伴い問題数は
解剖学 9問
生理学 9問
臨床医学総論 10問
臨床医学各論 22問
総合問題(臨床医学)8問
合計48問です。
総合問題(臨床医学)を正確に解けるようになることで国家試験の合格に近づきます。ただ注意が必要なのは、総合問題(臨床医学)は単に暗記さえすればいいものではなくそれぞれの科目の知識を組み合わせて解答することが求められることです。
そのため解剖学、生理学、臨床医学総論、臨床医学各論を正確に理解し、知識を定着させなければ高得点が狙えない科目でもあります。逆に実際の臨床を想定したような問題でもあるので、勉強する際には鍼灸師になった時のことを想像できる面白い科目でもあると思います。
②臨床で治療することが多い運動器疾患について
鍼灸師の国家資格を取得後、鍼灸院や鍼灸整骨院、整形外科などに勤める方が多いと思います。そのため臨床で多く診ていくのは「運動器疾患」の症例になります。
この運動器疾患の症例に関しては、総合問題として多く出題されます。(一部リハビリテーション医学にも出題されますが、基礎科目寄りになります)
先述した鍼灸国家試験を作成・監修をしているあん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師国試あり方検討会で、『国家試験科目に設定されていない「運動学」に関する問題はリハビリテーション医学や総合問題の中で取り扱うことが適当と思われる。』という記載があり、過去問でもスポーツ障害なども「運動学」に含まれ、総合問題(臨床医学)で出題されてきました。
臨床でも多く診ることになるであろう総合問題(臨床医学)の問題をしっかり押さえて、勉強すれば、国家試験勉強だけでなく今後の自分が目指していく方向にも役に立つので重要な科目になります。
総合問題(臨床医学)の国家試験過去問を解いてみよう!
さて、いかがでしたか?
簡単に思えた方はしっかりと勉強ができています。
間違った問題がある方はこのまま国家試験を受験するのは不安材料があります。どの科目(解剖学、生理学、臨床医学総論、臨床医学各論)が苦手で間違ったのか明確にし勉強する必要がります。再度、自分の理解していない科目を明確にして取り組んでみてください。
※鍼灸国家資格対策ラボではこれ以外にもたくさん問題を用意しています。こちらをご覧ください。全て無料です。
ちなみに全く分からなかった場合は、まずは学校で学んでいることを大切にしながら、このサイトを活用して鍼灸師の国家資格を取得できるように頑張ってください!!
総合問題(臨床医学)の勉強法の2つのポイント
1 出題のパターンの理解
2 過去問の活用、弱点分析
です。
これらを説明していきます。
総合問題(臨床医学)勉強法ポイント1(@鍼灸国家試験)
総合問題(臨床医学)は科目のテキストがありません。そのため科目のテキストを使っての勉強をすることができません。様々な科目を理解しているからこそ解ける問題です。
鍼灸国家試験で問われる総合問題(臨床医学)では先述した通り、「具体性のある症例」についての問題が出されます。
問題には出題パターンというのがあり、それを理解し、解いていくことが攻略のカギになります。
出題パターンはシンプルで上述したように一つの症例を最初に説明され、その症例に対して問1・問2に答えるということです。
詳しく解説すると、問1は症例に対しての評価や検査、症例名を答える問題になります。
29回(2021年鍼灸国家試験)の過去問では
・障害されている脳神経について
・脊髄損傷の残存高位
・スポーツ障害の診察初見
・女性の内科疾患について
の評価や検査、症例名を答える問題になっています。
そして問2では、問1で選択した評価や検査、症例名を基にアプローチ方法や処置について答える問題になります。総合問題(臨床医学)の厄介なところは、問1で選択した答えが間違っている場合、問2も間違えてしまう確率が非常に高くなってしまうところです。問題の解き方に関しては後述する『ポイント2』で記載しておりますので、それを踏まえて対策をしましょう。
総合問題(臨床医学)の出題傾向の背景には、臨床現場でも基本的に評価→鍼灸治療を行うことがあり、より実践的な学びの理解度を確かめるために出題されています。
近年はSOAPといった評価から治療までのプロセスを大切にする傾向があり、国家試験もそれに準じて出題されています。
「S(subjective):主観的情報」
「O(objective): 客観的情報」
「A(assessment): 評価」
「P(plan): 計画(治療)」
総合問題だからと特段身構える必要はありません。出題形式を理解し、基礎科目・応用科目の知識があればしっかり得点できる内容です。
総合問題(臨床医学)ポイント2(@鍼灸国家試験)
2つ目のステップは『総合問題(臨床医学)の過去問を解き、自分の理解度を確認する』です。
ここで初めて過去問の活用です。ただやみくもに過去問を解き、過去問の答えを覚えてしまうことがないようにきちんと自分の理解度を把握しましょう。特に応用科目での過去問の活用は他の科目よりも注意が必要です。基礎科目の理解が乏しくて間違う可能性があるからです。
自分がなぜ間違ったのか。どこを理解していなかったり、どこを覚え切れていなかったりするのかを明確にしましょう。
実際に過去問を解く時のポイントは、問題を解く時に3つに分類すると効果的です。
◯:合っていると自信あり
△:2択くらいまで絞ったけれど自信なし
✖️:全くわからない
それぞれの問題を◯、△、✖️で分類すること。その上で答え合わせをしましょう。
実際に答え合わせをすると
◯だけど答えを見たら正解の場合と間違っている場合があると思います。
もし、◯なのに間違っていた場合、根本的に覚えたことが間違っているので、その問題は何の科目なのかを明確にし、テキストを必ず確認しましょう。
もちろん◯で『正解』であれば、正確に暗記できているので学び直す必要はありません。
次に△で、答えを見たら正解の場合と間違っていた場合があると思います。
ここでは正解であろうと間違いであろうとここはすでに分からないことがある状況なので、何をわかっていないのかを明確にしましょう。例えば問題文の専門用語がわからないのか、理論がわかっていないのか、明確にしましょう。その上で対応する基礎科目をもう一度復習しましょう。
正解だから理解している、ではなくきちんと自分の理解度を確認することが大事です。
最後に✖️ で正解の場合と間違いの場合があると思います。
しかし、✖️ がついている時点で理解していません。なので✖️ がついた時点で学び直し決定です。
問題に出てきた文章がわかっていないのか、それともそれ以前の基礎科目(解剖学、生理学、臨床医学総論)の用語や理論がわかっていないのか学び直しなのかで学ぶべき内容が変わってきます。
鍼灸国家試験の過去問を解くにしても、上記した内容を意識して実施しましょう。一番良くないのは『過去問の答えを暗記してしまうこと』です。勉強した気では鍼灸国家試験は合格できません。
自分自身の苦手を明確にして、そこを徹底してなくせるように勉強に励みましょう。
総合問題の鍼灸国家試験WEB問題集はこちらから
合わせて基礎科目・応用科目も確認しましょう!
『基礎科目』
解剖学の鍼灸国家試験WEB問題集はこちらから
生理学の鍼灸国家試験WEB問題集はこちらから
臨床医学総論の鍼灸国家試験WEB問題集はこちらから
『応用科目』
臨床医学各論の鍼灸国家試験WEB問題集はこちらから